コラム:楽観論を捏造する中国、不動産市場の過熱ぶり隠ぺい
Pete Sweeney
[香港 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国では1日また1日と、信頼できる経済指標が姿を消している。過熱する中国不動産価格の動向を示す独立経済指標2つが最近、静かに公表を停止した。
スモッグが濃さを増し、データが不鮮明になっている同国は文字通り、そして比喩的にも一段と不透明になっている。エコノミストらはポジティブな見方を貫くよう命じられている。
政府は公的に命令を発したことはないものの、不動産市場の自主規制は自発的に行われているようだ。ただ今回公表が停止されたのは、製造業の活動や大気汚染などを示す民間指標のうち、ごく一部に過ぎない。
ただ、信用できる情報がない中では、投資家は統計より口コミに頼りがちになる。過去の経緯からみて、一般の中国人は公式声明に対する根深い不信感を持っており、うわさに対してはパニックになった家畜の群れのようになる。中国政府が風説の流布の疑いで多くの処罰を行ってきたのはこれが理由だ。過去、未確認のうわさが株価急落、銀行破綻を招き、人々をボトル入り飲料水やヨード塩や粉ミルクの買い占めに走らせてきた。
不動産データにブラインドを下ろすのは、特に危険だ。家計や資金の貸し手は、政府が一段の価格抑制策を打ち出すのではないかと戦々恐々としている。公表が停止された捜房網(ソーファン・ホールディングス)の調査がこの見方を裏付けており、100都市の不動産価格上昇は公式統計を上回る大幅上昇となっていた。
不動産規制の強化に対する懸念は住宅価格の急落だけでなく、より危険な状況を誘発する可能性がある。不動産に投資している流動性のより高い債券や富裕層向け商品も急落する事態だ。
独裁体制における最もよく知られた、最も危険な自己欺瞞(ぎまん)は、楽観論を捏造(ねつぞう)することで人為的に本物の自信を生み出すのは可能だということだ。
最近まで中国政府は、事態が正しい方向に進んでいると国民に納得させることに関して、かなり良い仕事をしていた。だがそれは、事態が本当に改善していたという要因が大きかった。中国経済は実際急速に成長していたし、制度改革や社会の自由化も進んでいたのだ。
いまやファンダメンタルズは不安定となり、制度改革は後退し、反対意見は沈黙させられ、政府幹部は国民など簡単にだませるとの嘆かわしい錯乱に陥っているようだ。
だが、中国資本は引き続き海外脱出を目指す。政府が明かりを暗くすればするほど、何かが隠されているとの疑念を抱く国民は増えていくだろう。
●背景となるニュース
・中国の不動産ウェブサイト運営会社ファン・ホールディングス傘下のチャイナ・インデックス・アカデミー(中国指数研究院)が、国内100都市の月次の住宅価格指数の公表を昨年11月以来中止。
・E―ハウス・チャイナ(易居)も288都市の月次の住宅価格指数の公表を無期限に中止。
・ファンの会長は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、公表停止は自分が主導したと説明。「影響力のある調査会社として、より安定的な市場動向を調べるのが良いと考えた」と述べた。
・昨年9月には、金融情報プロバイダーのマークイットが製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値の発表を停止。製造業PMIは公式統計と矛盾することが多かった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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