日本に必要なのは財政拡大、基礎的収支の目標年限撤廃を=シムズ教授

日本に必要なのは財政拡大、基礎的収支の目標年限撤廃を=シムズ教授
 2月1日、ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授(写真)は、日本経済研究センターで講演し、プラスの物価上昇を実現するには現在の財政赤字を拡大することが役立つとの「物価水準と財政理論」を前提に、将来不安により支出が萎縮している日本で必要なのは継続的な財政拡大とインフレ実現への政治的コミットだと指摘した。写真は都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 1日 ロイター] - ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授は1日、日本経済研究センターで講演し、プラスの物価上昇を実現するには現在の財政赤字を拡大することが役立つとの「物価水準と財政理論」を前提に、将来不安により支出が萎縮している日本で必要なのは継続的な財政拡大とインフレ実現への政治的コミットだと指摘した。基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)黒字化に固執するとデフレから脱却できないとした。
現在安倍政権は、PB黒字化を2020年度に達成するという期限を決めているが、同教授はそれは誤りだとみている。
日本では「短期的な景気対策としての財政拡大は次の増税で穴埋めされると人々が感じて支出が抑制されているほか、高齢化による将来不安も重なっている」と指摘する。PB赤字の拡大をインフレ実現とリンクさせれば、将来にわたって財政赤字が拡大するとわかり、国債価値が下落。それによって国債保有から実物消費へのシフトが起こり、物価が上がるとの理論を展開した。
「日本で物価上昇に向けた効果を高めるためには、消費増税を先送りすることが望ましい」とし、「財政拡大とインフレがひも付られていることを国民に認識してもらう必要がある」とした。インフレ実現により、政府債務一部削減も実現できるという。
ただインフレは国民にとっては税金と同じような負担となるため、政治家はインフレを目指すとはなかなか言い出しづらい面もある。
シムズ教授は、米国では選挙を経た後にインフレ宣言を行うことで人々のインフレ期待の上昇に効果があったとも説明。「日本においてはさらに、年金生活者が増えてインフレで負担感が増すこともあり、特に政治家から言い出しにくい状況がある。国民の間からインフレを求める声が出てくることが必要だ」と指摘した。

中川泉

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