アングル:人民元安を恐れる中国人、外貨預金口座の開設急ぐ

アングル:人民元安を恐れる中国人、外貨預金口座の開設急ぐ
 12月19日、中国では、人民元の下落を懸念した一般市民の間で外貨預金口座を開設する動きが加速している。写真は米ドルと人民元紙幣。北京で1月撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)
[上海 19日 ロイター] - 中国では、人民元の下落を懸念した一般市民の間で外貨預金口座を開設する動きが加速している。上海に住む会計士のZhang Yutingさん(29)は、米国に行った経験は一度きりで、外貨を使う必要もほとんどないが、ドル口座を開いた。
同じような人は多く、公式統計によると、今年1─11月に中国の家計が保有している外貨預金は32%近く増えた。人民元がドルに対して8年ぶりの安値に下がったからだ。
外貨預金の伸び率は、人民元その他通貨の預金総額に比べて約4倍のペース。米国の利上げや中国経済の先行きへの不安から、資本が海外に逃避している。
トランプ次期米大統領が中国からの輸入品に懲罰的関税をかけると宣言したり、台湾や南シナ海問題を巡って緊張が高まっていることも、懸念に拍車を掛けている。
企業や銀行、富裕層が外貨預金口座その他の海外資産に振り向けている金額に比べれば、家計の外貨預金規模は大きくはない。11月末時点の家計の外貨預金残高は1187億2000万ドルだが、外貨預金全体の残高は7025億6000万ドルだった。
しかし家計による外貨保有の急増は資本逃避を象徴しており、人民元安と格闘する政府にとって頭痛の種だ。
政府は10月以来、外貨送金の承認制強化などの資本流出抑制策を講じてきたが、今後さらに規制を強める可能性がある。
個人による外貨換は年間5万ドル相当まで許されているが、複数の銀行筋によると、現在の状況が続けば対策が強化されそうだ。
銀行幹部2人によると、一部の銀行は、1日の上限である1万ドルの交換を2日続けて行った顧客をブラックリストに載せている。掲載された人は一定期間、交換を禁じられる可能性もあると幹部1人は話す。
また、資本流出を抑えるよう圧力をかけられている銀行は、自発的に外貨を人民元に戻した顧客に景品などを提供している。交通銀行では、1000ドル以上を人民元に換えた顧客はくじ引きに参加することができ、携帯用プリンターなど様々な商品が用意されている。中国工商銀行はウェブサイト上で、ドルから人民元への両替に優遇レートを提供している。
しかしキャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏によると、市民の間には外貨預金よりも、実際に持ち出せる現金を好む傾向も見られる。「規制当局は預金なら大いに統制しており、国内の外貨預金への流入ペースを統制することもできる」からだ。
前出のZhangさんは、人民元がさらに下がれば国が規制を強化し、口座内のドルを売るよう命じられる恐れもあると考え、ドルを現金で引き出した。こうした動きについて政府が何らかの対策を練っている様子は見受けられない。
(Winni Zhou、John Ruwitch記者)

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