コラム:トランプ時代、安倍首相に有利な理由

コラム:トランプ時代、安倍首相に有利な理由
 12月19日、安倍首相(写真)は、トランプ次期米政権の時代を自身の政治的立場と日本が有利になるように導いていける。NY市で11月撮影(2016年 ロイター/Andrew Kelly)
Quentin Webb
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 安倍晋三首相は、トランプ次期米政権の時代を自身の政治的立場と日本が有利になるように導いていける。
一見すると、非現実的な振る舞いのトランプ氏は、グローバル化に依拠し、米国にアジア太平洋の警察官的役割を期待する日本にとって危険極まりない。だからこそ安倍氏は、他国に先駆けてトランプ氏に面会した。ただそうした不安にもかかわらず、安倍氏は政治的にも経済的にも恩恵を得る可能性がある。
安倍氏は主要民主国家では政権の座にある期間が最も長い首脳のひとりで、日本の首相として異例だ。この状況は大衆迎合主義(ポピュリズム)が世界を揺るがす中で要石の存在として、国際政治の舞台で強みとなり、それが国内の求心力を高めることになる。また米次期政権内には、商務長官に指名されたウィルバー・ロス氏などの知日派が日本政府とのパイプ役になるだろう。さらにトランプ氏が選挙期間中にさまざまな日本批判を展開したとはいえ、安倍氏が率いる自民党は元来、米民主党よりも共和党と親しい。
こうした状況はすべて、もし安倍氏が今後、自民党総裁任期の延長が正式に決定されるのを踏まえて、政権基盤強化のために早期の解散総選挙に打って出ようと思う場合にプラスに働く。トランプ氏がアジアの勢力均衡に無頓着で無関心なことも、安倍氏にとって悪い要素ばかりではない。米国のアジアからの後退は、安倍氏の宿願で政治的道のりが険しい憲法改正を前進させるからだ。
経済面では環太平洋連携協定(TPP)が消滅する公算が大きくなったことは、日本にとって痛手だ。河野太郎内閣特命大臣はこの貿易協定が「トランプ太平洋連携協定(Trump Pacific Partnership)」として生まれ変わる可能性を指摘したが、これは楽観的過ぎるように見える。
だがもっと大きな構図に目を向けると、視界は良好だ。米経済が大方の予想通り上向けば、日本経済はその後を追うのが通常のパターン。12月初め時点ではドル/円は113円台で、輸入価格上昇を通じた日本の消費者へのしわ寄せがそれほど大きくならない一方、輸出企業は利益を得られる水準だった。サントリーや損保ジャパン日本興亜<8630.T>、コマツ<6301.T>といったこれまで大規模な海外の合併・買収(M&A)を実施した企業は、円安/ドル高で利益が押し上げられる。
安倍氏には財政刺激策を推進するための大義名分もある。1年前には先進7カ国(G7)会合で安倍氏が財政が景気刺激の役割を金融政策から引き継ぐべきという主張は、ほとんど受け入れられなかった。ところが今では米国がインフラ投資を拡大する態勢にある。安倍氏の得意思うべしだ。
●背景となるニュース
*安倍氏はトランプ氏について11月17日の初会談後、「信頼できる指導者」と評した。米大統領選後にトランプ氏に面会した外国の首脳は安倍氏が初めてだった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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