情報BOX:安倍首相、過半割れなら「私も辞任」

情報BOX:安倍首相、過半割れなら「私も辞任」
 9月25日、安倍晋三首相は記者会見で、「与党で過半数を取れなければ下野する。私も辞任することになる」と明言した。写真は都内で同日撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 25日 ロイター] - 安倍晋三首相は25日の記者会見で、衆院選の勝敗ラインについて「与党で過半数を取れなければ下野する。私も辞任することになる」と明言した。質疑応答部分の全容は以下の通り。
問)冒頭発言で解散理由について説明があった。それをある程度予想した上で、今回の解散に当たって「大義がない」「北朝鮮情勢が緊迫する中、選挙にふさわしいタイミングではない」「野党からの国会召集要求を事実上応じず、森友・加計学園問題からの追及回避ではないか」といった指摘が出ている。そうした指摘にどう答えるか。
答)わが国が直面する最大の課題は少子高齢化だ。これを克服していくためには、社会保障制度を全世代型のものへと大きく転換しなければならない。時間の猶予はない。待ったなしだ。
大きな改革には当然、大きな財源が必要となる。財源の目当てがないままでは、改革の中身それ自体が小さくなっていく恐れがある。本日、子育て世代への投資を拡充するため、これまで約束していた消費税の使い道を思い切って大きく変えるという決断をした。消費税の使い道は、5%から10%に引き上げる際の前提であり、これは国民の皆様に約束していたことでもある。税こそ民主主義であり、国民生活に大きな影響を与える税制において、これまで約束した使い道を見直す。
この大きな決断をする以上、国民の皆様に信を問わなければならない、その判断を仰がなければならない。こう決心した。
私たちが約束してきたことを変える以上、信を問わなければならないとお答えした。また、私たちが野党だった2012年、当時の与党の民主党に対し、民主党政権がマニフェストに無い消費税の引き上げを行う以上、法案を出す前に、総選挙を行って国民の信を問うべきだと私たちは主張してきた。
私たちの主張は一貫している。税に関わる大きな変更を行う以上、国民生活に大きく関わる変更を行う以上、国民に信を問わなければならないということだ。次に、臨時国会の召集時期についてだが、8月には予算編成に向けた概算要求の作業があった。9月には北朝鮮情勢が緊迫する中、ロシアやインドを訪問するなど、外交日程をこなしてきた。
先般は、国連総会に出席し、日米首脳会談あるいは日米韓の首脳会談等を行ったところだ。こうした内外の諸課題に対応するため、総合的に判断して、今週の28日の召集を決定したものだ。憲法上問題はないと考えている。
その上で申し上げれば、閉会中においても、必要に応じて、衆参あわせて15回閉会中審査を行ったし、私自身も衆参の予算委員会に閉会中審査に出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきたところだ。今後もその考え方には変わりはない。
選挙はまさに民主主義における最大の論戦の場である。
こうした中での総選挙は、私自身への信任を問うことにもなり、私自身の信任も含めて、与党の議員すべての、そして全国会議員の信を問うわけだ。それは追及不可避どころか、こうした批判も受け止めながら、そこで国民の皆様に対してご説明もしながら選挙を行う。むしろ大変厳しい選挙となることが予想される。
それを覚悟の上で、しかし、先ほど申し上げたように、税こそまさに民主主義であり、税に関わる重大な変更については国民の信を問わなければならないことは、従来から一貫して申し上げてきた、私の、また私たちの考え方に沿って今回解散をする。
また、北朝鮮について申し上げれば、日本と北朝鮮、大きな違いは国民の代表を、リーダーを、選挙によって選ぶことだ。民主主義のまさに原点だ。
その選挙戦が独裁体制である北朝鮮の脅かしによって影響を受けることはあってはならないと判断した。もとより危機管理に万全を尽くし、国民の生命と財産を守り抜いていくことは当然のことであろうと思っている。
問)消費税の使途変更の件で、プライマリーバランスの黒字化目標達成が困難だという考えを示す一方、財政再建の旗は降ろさないと話した。なぜ、借金返済分ではなく、他の費目を削って教育無償化の財源にしないのか。格差の固定化を防ぐという目的から、高等教育だけではなく幼児教育に関しても、3歳から5歳の部分に関しても、所得制限を設けた方が良いのではないか。教育の質の確保の観点から、無償化の対象となる高等教育、大学や専門学校に関しては学校の選別、線引きをすることは考えるか。
答)少子高齢化という最大の壁に挑戦するわけである。その少子高齢化と言う最大の課題を克服するためには、わが国の社会経済システムを大きく転換させなければならず、大胆な改革が必要だ。
財源については10%引き上げ時の消費税増収分を充当することとした。増収分を借金返済と、これはいわば社会保障の安定化でもありますが、子育て世代への投資とにバランスよく充当し、併せて財政再建も確実に実現する考えだ。
確かに、予算の無駄を省くことは当然だが、これだけ大きな予算、他の予算を削るだけで出てくるかどうか。あるいは他の予算から削ってきたもので充当しようとすると、残念ながらその規模は小さくなってしまう可能性もある。私たちは無駄遣いをなくせば2兆円出てくる、と無責任なことを言うわけにはいかない。
もちろん無駄遣いはしてはならない。その中で例えば私たちは、社会保障の伸びを抑えるということによって、1兆円伸びるものを5000億円以下に抑えている。これは小泉政権当時の2200億円よりも多くの伸びを押さえている。
その上において、これだけ大きな改革を行うので、予算については安定財源をあらかじめ示さなければならない。
繰り返しになるが、まだ目途もないのに他の予算を削って2兆円を出すという無責任なことを言うべきではないと考えている。
また幼児教育の無償化は、若い子育て世帯を応援し、社会保障を全世代型へ抜本的に変えるために一気に進めていく必要があると考えている。広く国民が利用している、3歳から5歳児の幼稚園、保育所については全面無償化する。
また、0歳から2歳児についても、待機児童の解消を進めるとともに、所得の低い世帯について保育所無償化を行うことを考えている。高等教育については、格差の固定化を防ぐため、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば、専修学校や高等教育、大学にも進学できる社会に変革しなければならないと考えている。つまり、より多くの人たちが、その才能を生かせる社会にしなければ、少子高齢化社会を乗り切っていくことはできない。
真に必要な子どもに限って、高等教育の無償化を必ず実現していく考えだ。そして、無償化対象とする大学の線引きについてであるが、高等教育無償化について、真に必要な子どもへの支援を線引きすることは考えていないが、同時に大学改革も強力に進める必要がある。その実効性も上げなければならないと考えている。
いずれにせよ、詳細な制度設計は政府・与党において詰めていきたい。
問)先週、トランプ米大統領は北朝鮮のリーダーを「ロケットマン」と呼び、米国は「北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢がないかもしれない」と発言した。このコメントは、日本をより安全にするのか、それとも、日本人の安全性は低くなるのか。
答)トランプ大統領の個々の発言についてのコメントは控えたいが、日本は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとの米国の立場を一貫して支持している。国連総会の機会に、トランプ大統領と日米韓首脳会談、そして日米首脳会談を行い、日米は100%ともにあることを確認した。今後とも北朝鮮に対して、北朝鮮がその政策を変えるまで、しっかり日米で協力しながら、国際社会とも連携しながら圧力をかけ続けていきたい。
問)小池東京都知事が「希望の党」を立ち上げた。都議選では都民ファーストの会を通じて自民党は惨敗した経緯がある。「希望の党」が総理の戦いにどう影響を与えるのか、自公協力についてはどう影響を与えるのか。
答)希望というのは良い響きだと思う。小池知事は第1次安倍政権では安全保障担当の補佐官務めてくれた。また(女性)初の防衛大臣も第1次安倍政権で務めていただいた。つまり安全保障、基本的理念は同じだろうと思っている。政治手法において少し違うかもしれないが、いわば、この選挙においては、さまざまな政党がしっかりと政策を前面に打ち出しながら、建設的な議論を行うことによって国民の期待に応えていきたい。
いずれにせよ、東京都知事である小池知事とは東京五輪・パラリンピックを成功させなければならないという共通の目標は持っている。その上で、選挙戦はフェアに戦いたいと思っている。
問)今回の衆院選で自らへの信を問うと表明した。勝敗ラインはどのように考えているか。2兆円の経済政策という話もあったが、財源については消費増税の使途変更ですべて賄うつもりなのか、また、足りない場合はさらなる国民、企業への負担増も考えているのか。
答)まず勝敗ラインだが、衆院選は政権選択の選挙だ。いわば、自公政権を選んでいただけるのか、あるいは野党政権を選ぶのかを決める選挙であるから、当然過半数を取れば政権を取り、過半数を取れなければ下野する。私も辞任することになる。ですから目標は常に、与党で過半数である。これは2014年の選挙の時にもそう申し上げたし、また小泉総理の時の郵政解散でも与党で過半数ということを勝敗ラインとして掲げた。
しかし、この選挙戦は相当厳しい選挙戦になる。それは覚悟の上だが、全力を尽くして与党で過半数を上回らなければならないと考えている。今回から定数10議席削減される。ですから自公連立政権で233が勝敗ラインと言ってもいい。233議席以上を取りたい、こう考えている。
同時に、私は自民党の総裁であり、全候補の当選を期して一丸となって全力を尽くしていきたい。
財源の問題だが、先ほど概ね2兆円必要であると話したが、その中で消費税についてこの安定化財源との関係においては、概ね半々ということになるのだと思うが、それ以外、例えば党において、保険について「こども保険」という議論もあった。保険でどれくらい対応するのかどうかという議論もあると思う。
保険ということになれば、企業の負担も出てくるということかもしれないが、そうしたことも含め、党内で具体的に議論していくことになる。大宗は消費税から充当していきたいと考えている。

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