コラム:トランプ大統領、日本に与える「頭痛の種」
Quentin Webb
[10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本の当局者は日本酒をちょっとひっかけた方がいいかもしれない。来たるべきトランプ大統領の時代は、世界第3位の経済大国である日本にとって、多くの頭痛の種を生み出すことになるからだ。
たとえ過度の円高を回避したとしても、保護貿易主義の台頭や経済の不確実性、アジア太平洋地域への米国のコミットメント縮小といった課題は残ったままだ。
日本の市場は、世界的イベントに対して神経質になりやすい。それゆえ、11月9日は米大統領選の結果が判明するにつれ、一時的に円が急騰し、日経平均が急落しても驚きではなかった。不確実性が高まったときには、安全資産の円が逃避買いされ、輸出関連株は直撃される。だが、現在のように米国債利回りが上昇すれば、資金はドルにまた流れ込む。投資家はおそらく、予想外のトランプ勝利を消化するのに時間が必要だったのだろう。
強すぎる自国通貨は企業利益を減少させ、輸入価格を下げることになり、さらには日銀のインフレ目標達成を困難にさせる。日銀はマイナス金利の深堀りを迫られるかもしれない。少なくとも現在そのような圧力は鳴りを潜めている。
しかしながら、安倍晋三首相は対処すべき課題の山に直面している。首相が強く支持する環太平洋連携協定(TPP)が今やほぼ死に体と化していることは大きな失望である。だが裏を返せば、問題がそれ以上に悪くなることはないということだ。
とはいえ、もしトランプ政権が関税を引き上げたり、グローバル化に対して他の措置を講じたりするのであれば、それは打撃となる。モルガン・スタンレーによると、日本の対米輸出は全体の4分の1を占める。その一方で、世界経済全体の見通しもますます暗くなっている。日本企業の経営者は一段と慎重になり、日本が抱える問題はすでに弱まっている成長力とともに根強さを増す可能性がある。
トランプ氏が日本に防衛費負担を求めていることも懸念要因だ。米軍を日本に駐留させる全費用をめぐる話はまだ扱いやすいが、この問題にはもっと広い意味が暗示されている。つまり、アジアの米同盟国は、自分自身で防衛しなければならいということだ。これは地域の安定にとって悪い予兆である。
安倍首相が推進する構造・財政改革、金融緩和政策は、かつてないほど必要とされている。ほとんどの日本人はそれに祝杯をあげるだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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