コラム:政界経験乏しい「チームトランプ」のお手並み拝見
Gina Chon
[ニューヨーク 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ次期大統領の政策運営は、さながら新たな経済理論の実験といった様相になるかもしれない。
既得権益層への怒りに訴えて勝利した不動産王のトランプ氏だが、結局はゴールドマン・サックスや買収ファンドのKKR、数々のヘッジファンドに属する金融家から助言を仰ぐ可能性がある。政界経験に乏しい経済チームが米国経済を好転させられるのか、お手並み拝見といったところだ。
トランプ氏は民主党のヒラリー・クリントン候補について、ウォール街と癒着しており、銀行の言いなりだと攻撃してきた。しかしトランプ氏自身が金融業界の金持ちエリートに助けを求めるだろう。
選対の財務責任者を務めたゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏は、財務長官の最有力候補だ。ヘッジファンドを運営するジョン・ポールソン、アンソニー・スカラムッチ両氏も選挙戦でトランプ氏に政策助言を行っており、新政権でも同様の役割を果たす可能性がある。
トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)その他の貿易協定を破棄する可能性をちらつかせているため、この分野でどのような人材を起用するかは要注意だ。同氏は通商代表部(USTR)を廃止して商務省に統合する意向を示している。共和党の財務委員長でありKKRの上席顧問を務めるルー・アイゼンバーグ氏や、富豪投資家のウィルバー・ロス氏がこの機関のトップに起用されるかもしれない。
トランプ氏は米最大手企業100社の最高経営責任者(CEO)からは支持を得られなかったが、産業界からも助言を得ている。石油会社コンチネンタル・リソーシズのハロルド・ハムCEOがエネルギー相の有力候補となりそうだ。
これらの側近達は、ほとんどが政界での経験を持たない。議会上下両院を共和党が制したことで、トランプ氏とその仲間達にとって少しは政策を進めやすくなるかもしれない。しかし上院で共和党は過半数を辛うじて上回ったにすぎず、法案通過には民主党の助けが必要になるだろう。
選挙戦では往々にして、政治のアウトサイダーが闘いやすい。しかし政治を司るには一連の専門技能が必要とされる。「チーム・トランプ」は間もなく、専門のビジネスで経験を積んでいるからといって、経済全体を繁栄させる仕事に直結はしないことを思い知るだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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