コラム:各社がツイッター買収に二の足を踏むわけ
Jeffrey Goldfarb
[ニューヨーク 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 短文投稿サイトの米ツイッターが身売りの意向を示したことは、つぶやきの嵐を巻き起こした。送られたダイレクトメッセージにはこう記されている。「買い手企業にとって、時価総額150億ドル程度を支払うのは容易に納得できない」
ツイッターは月内に身売り交渉をまとめたい意向だ。米グーグルの持ち株会社アルファベットや米娯楽大手ウォルト・ディズニー、米アップルが当初は関心を示したとされるが、米有力IT(情報技術)ニュースサイト「リコード」によると、いずれも買収を提案しないことにした。
投資家は一喜一憂した。CNBCが身売り間近と伝えた9月23日、ツイッター株は数日間で35%も急騰。グーグルなどの買い手候補企業が相次ぎ撤退したと報じられた10月6日には20%も急落した。
米顧客管理ソフトのセールスフォース・ドット・コムは、ツイッター買収の可能性が伝えられると急落したが、マーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)が買収に消極姿勢を示すと反発した。セールスフォースはキャッシュが乏しく、投資家は買収による財務の悪化を望んでいないのだろう。しかしどんな企業であれ、通常の財務分析を行えばツイッターを買収するのは道理に合わないことが分かる。
ツイッターは来年、2億7000万ドル程度の赤字を出すと見込まれている。ここに約1億ドルの金利を足し戻し、研究開発およびマーケティング費約17億ドルの半分を買い手企業が削減すると想定すると、営業利益は7億ドル近くとなる計算だ。モーニングスターによると、ツイッターの加重平均資本コストは約9%。これに匹敵する投資収益を生み出そうとすれば、税率をゼロと甘く見積もっても、77億ドル以上の買収額は支払えない。これは現在の時価総額の半分程度だ。
シリコンバレーではしばしば独自の比較手法が好まれる。月間アクティブユーザー数に対する価格という尺度を使うなら、マイクロソフトがリンクトイン買収で支払った額に比べてツイッターは安く映るかもしれない。あるいは、アルファベットのような企業ならツイッターの豊富なデータからもっと価値を生み出せるかもしれない。しかし目下のところは、「どんな企業であれ、ツイッターの買収を正当化するのは難しそう」というのがトレンドの話題のようだ。
●背景となるニュース
*買い手候補企業が相次いで撤退、との報道を受け、ツイッター株は6日に20%急落した。
*ロイターによると、ツイッターは第3・四半期決算を発表する27日までに買収提案を出すよう数社に伝えた。
*米有力ITニュースサイト「リコード」によると、グーグル、ディズニー、アップルは買収提案を計画していないが、セールスフォースは検討中。
*セールスフォースのベニオフCEOは5日、ツイッターは「わくわくする商品だが、事業は明らかに多くの課題を抱えている」と述べた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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