アフガン難民への支援なければ15年の欧州難民危機が再来=独首相

ドイツ、アフガンから最大1万人退避させる必要=メルケル首相
8月16日、ドイツのメルケル首相はアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが首都カブールの大統領府を掌握したことを受け、ドイツは同国から直ちに最大1万人を国外に退避させる必要があると述べた。写真は8月10日、ベルリンで記者会見するメルケル首相(2021年 ロイター/Christian Mang)
[ベルリン 16日 ロイター] - ドイツのメルケル首相は16日、反政府武装勢力タリバンから近隣諸国に逃れてきたアフガニスタン人が十分な人道的支援を受けられなければ欧州に流れ込み、2015年の欧州難民危機が再来しかねないと警告した。
記者団に対し「アフガニスタンからの外国軍撤退以降、タリバンは息を呑むような速さで州から州へ、町から町へと侵攻し、国全体を再び征服した。これは特にアフガニスタンの人々にとって本当に苦々しく、劇的で、恐ろしい展開となった」と指摘。「大きな不安や懸念を抱えている多くの人々がアフガン近隣諸国で安心して過ごせるようにしなければならない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や他の支援プログラムが十分に資金を提供せず、ヨルダンやレバノンの人々が欧州に向かった過去の過ちを繰り返してはならない」とした。
国際的な資金援助の削減は15年にレバノンやヨルダンからシリア難民が流出した要因の一つとされている。ドイツは当時、戦争や貧困から逃れてきたシリア人やイラク人を中心に100万人以上の難民を受け入れ、国際的には称賛されたが、国内では物議を醸し、メルケル首相率いる与党キリスト教民主同盟(CDU)の逆風となった。
メルケル首相は9月26日の総選挙に出馬せず引退する。後任となる可能性が高いCDUのラシェット党首は、タリバンによるカブール掌握を北大西洋条約機構(NATO)結成以来最大の失態と述べた。
これに先立ち、メルケル首相はCDUの非公開会合で「困難な時期に直面している。現在は救援活動に注力しなくてはならない」とし、アフガニスタンの支援スタッフ2500人を含め、国内にとどまった場合にリスクにさらされる恐れがある人権活動家や弁護士ら最大1万人を国外に退避させる必要があると指摘。現在退避している人たちを支援するために、ドイツはアフガニスタンと国境を接する国と協力する必要があると述べた。

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