焦点:北朝鮮の金正恩指導部に亀裂か、最側近の軍司令官を処罰

[ソウル 21日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の最側近である崔竜海党副委員の命令で、同じく最側近の1人と見られていた黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長が何らかの罪で処罰されたと見られている。
北朝鮮が9月に核実験を行った際、崔氏とともに金氏の側に座る写真が記憶に新しい黄氏の処罰は、北朝鮮指導部内の亀裂を示す動きとして注目される。
処罰は韓国の情報機関、国家情報院の幹部らが報告したもの。北朝鮮の情報は確認が難しく、専門家はこの情報から結論を出すのは時期尚早としている。
クライシス・グループのアナリスト、クストファー・グリーン氏は、「部下同士を競わせるのは独裁政治の基本だ」と述べ、金氏が側近同士を闘わせているとの見方を示した。
60代半ばの黄氏は、眼鏡をかけた内気な軍司令官で、わずか数年で指導部トップに登り詰めるという異例の昇進ぶりを見せた。2014年に総政治局長に任命され、金一族以外で最も強い権力を握る1人となった。
韓国国家情報院によると、黄氏の処罰が、過去に同氏と競った崔氏の音頭で行われたことで、今回の動きはさらに深い意味を持ちそうだ。
北朝鮮メディアによると、黄氏と崔氏が最後に公の場で同席したのは10月初め、体操競技の催しを観覧した際だった。その後、黄氏は表舞台から姿を消した一方、崔氏は先週、平壌を訪れた中国高官らと会っている。
韓国高官らによると、崔氏自身、過去には「再教育」を受けるよう命じられたことがあるが、この10月に中央軍事委員会メンバーに昇格して以来、影響力を強めているようだ。
韓国国家情報院は、崔氏が現在、北朝鮮指導部の人事を管轄する秘密組織、組織指針局(OGD)のトップに就いていると示唆している。
<翼を刈る>
梨花女子大学・統一研究所の北朝鮮専門家、リー・サンコン氏によると、黄氏の地位が大きく脅かされたのは今回が初めて。黄氏は、気まぐれで悪名高い金氏に対し、恭しく慎重な態度で接してきたことで定評がある。
リー氏によると、処罰は黄氏が具体的な失敗を犯したからではなく、朝鮮労働党による軍部掌握を確実にするための金氏の取り組みの一環かもしれない。
韓国議会の情報委員会に所属するキム・ビュンキー議員によると、今回の処罰は、朝鮮人民軍総政治局に対する20年ぶりの抜本的な検閲の一部として行われた。
一方、ジョンズ・ホプキンス・スクール・オブ・アドバンスト・スタディーズ(ワシントン)のプロジェクト、「38ノース」の専門家、マイケル・マッデン氏は、2013年の大規模粛清の二の舞を避けるための予防策ではないかと見ている。当時は金氏の叔父である張成沢氏が処刑された。
マッデン氏は、黄氏の権力が強大になり過ぎ、処刑するしかなくなる前に処罰した可能性があると分析し、「金氏がやっているようなことを、世間では翼を刈ると言う」と話した。
(Hyonhee Shin記者 Josh Smith記者)

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